嵐が丘(エミリー・ブロンテ)感想と考察

嵐が丘は、エミリー・ブロンテの生み出した不朽の名作です。
私は実は妹のシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」を先に読んで、その後この名作に手をかけました。
姉妹そろって何たる才能…
そして「嵐が丘」にも「ジェーン・エア」にも登場するイギリスの地方のヒースの咲き乱れる殺伐とした広大な大地が、物語の背景として横たわります。
ヒースの大地が生んだ悲劇と、人間の愛憎劇が、
何度でも何度でも人間の根幹を揺さぶってきて、人生で何度も繰り返し読んだ、大好きな本です。
「嵐が丘」は登場人物の名前がめっちゃややこしいです!
キャサリン⇒2人いる。(しかもダブル主人公)母子どっちも「キャサリン」だけど、
- 母の子どもの頃…キャサリン・アーンショー
- 母結婚後…キャサリン・リントン
- 娘子どもの頃…キャサリン・リントン
- 娘結婚後…キャサリン・ヒースクリフ
- 娘、多分最後に…キャサリン・アーンショー
ヒースクリフもややこしい。名前なのか苗字なのかごっちゃにしてくる。
ヒースクリフという名前について。
- ヒースクリフ…主人公(名前これ一個)
- イザベラ・ヒースクリフ…ヒースクリフと結婚した時に、ヒースクリフが名前でもあり苗字でもあるってことになった
- リントン・ヒースクリフ…イザベラが自分の息子に「リントン」と名付けた(イザベラ・リントンという苗字だったのにここでリントンも苗字から名前になった)
- キャサリン・ヒースクリフ…キャサリンがリントン・ヒースクリフと結婚してこんな名前になった
もう意味不明…
ややこしいのは「キャサリン」と「ヒースクリフ」だけなんだけど、主役2人の名前がややこしいから、全体的にややこしく感じます。
嵐が丘という、イギリスの田舎のヒースの咲き誇る地域の物語。
孤児だったヒースクリフが大富豪の家に拾われたところからスタートします。
大富豪の娘キャサリンと仲良しになりますが、年頃に訪れる「身分の違い問題」で破局…
ってとこまではよくあるストーリーですが、ヒースクリフが根性でお金を稼いで戻ってきて、
自分を貧乏人扱いした人へ次々とどす黒い復讐をしていくという…
背景がヒースの暗い丘なので、物語全般が常に暗い。
ヒースクリフの性格もどす黒く、ヒロインのキャサリンも歪んでて暗い性格…
まあ、そもそも歪んでて意地悪いいじめっ子体質の似ている二人でお似合いでした。
2人が結ばれなかったからと言って、周囲全てを不幸に貶めていく、2人の悪魔の物語ともいえるような…。
ヒースクリフを虐待したり貶めていた人はともかく、周囲には善人もたくさんいたのに、善人たちもことごとく毒にやられていく様子がなんとも苦しく読み進めねばなりませんでした。
エドガーも、娘のキャサリンも、ヒンドリーの息子も。
語り手のネリーだけは善人だとわかるから、彼女のターンは安心して読めましたが、にしても主人公2人が狂い過ぎている。
狂った二人によって善人たちが次々と命を落とす世界線でもなお、主人公の2人を嫌いになり切れないのは、2人が本当に本当に思い合っていたからですよね。
狂ったような狂気の愛は、確かに胸を打つものがありました。
にしても…
2人が結ばれなかったのは、結局自分の貧乏がダサくて耐えられなくてプライドを選んで逃げ出したヒースクリフのせい。
結局自分のせいじゃん、って話でもあるんですけどね。
都会から来たロックウッドの存在が、嵐が丘で起きたすべてを、外の世界から遮断された狭い界隈での奇妙な出来事という、
物語の枠組みを強調しています。
彼の「嵐が丘にいる間は夢中になって、離れたとたんに忘れるほどの遠い距離間」が、ちょうど読者としての私たちの視点と似通っていて、嵐が丘の2つの屋敷の悲劇を「物語化」するんですよね。
作者のエミリーブロンテの姉のシャーロットは、有名な「ジェーン・エア」の作者なんです。
1男5女のブロンテ家の文才もすごいですが、家族の作品を通して物語に「ヒースで覆いつくされた丘」が出てくるんですよね。
いつか、イギリスの片田舎に行って、ヒースの丘をこの目で見たいと思える、名作です。

感想・レビュー