老人と海(アーネスト・ヘミングウェイ)感想と考察

世の中にこんな孤独があっていいのか…というくらい、究極の孤独が書かれています。
老人と海は、たった一人で海に漁に出た老人の猟師が、巨大なカジキと格闘の末、見事釣りあげる物語です。

釣り上げたはいいものの…帰る途中に船の端にくくりつけておいた巨大カジキを、サメにほとんど食べられてしまうという…切ないストーリーです。

それだけ…と思うかもしれませんが、それが壮大な人生の縮図のようで、とにかく圧倒されるんです。
70代のおじいちゃんが、経験則だけで海と、自然と格闘する姿は感動します。
海の上のじいちゃんの魚の調理法や釣りテクニックもさすが!と思うものばかり。
ノウハウを知り尽くしている感が頼もしくもあります。
カジキに関する「夫婦仲良し」というオオカミ王ロボみたいな切ないストーリーも興味深かったです。

じいちゃん、無理しないで💦
と思いつつも、「生きること」=「漁をすること」と根付いている生き方が美しくも見えます。
この美しい生き方を全うしてほしいと思うのに、サメに襲われて釣果はゼロに…。
疲れ切ったじいちゃんは、それでも寿命ある限り生きねばなりません。

見事なカジキを釣り上げたのに、陸に着くころには骨しか残っていない。
この重みを背負いながら生きてゆかねばならないのです。

ヘミングウェイは戦争の暴力性を問題視した作品を多く書いているので、老人と海でも自然とそのメッセージが読み取れます。

資本主義社会の中では、せっかく自分自身の力だけで勝ち取った成果を、ハイエナたちに食われ尽くして自分には何も残らない。
そんなメッセージにも思えるのです。

老人が海の上で何度も「あの子がいればなぁ」と、手伝いの少年を恋しく思うのもリアル。
人生の中でも、高齢になったら孫世代がそばにいるだけで大いに慰められるということかなと思いました。

あまりの孤独に、鳥とかに話しかける老人は、今の高齢者単身世帯に通じるものがあります。

けど、マイナス側面ばかりではありません。
老人になって、孤独になって、初めて自分自身ととことん対話するようになります。
人生の忙しい中では先延ばしになっていた問題と向かい合わざるを得ない。退屈だから。
そんな風に見えました。

海はやさしくて、とてもきれいだ。だが、残酷にだってなれる、そうだ、急にそうなるんだ

月が海を支配しているんだ。それが、人間の女たちを支配するように

毎日が新しい日なんだ

年とってひとりでいるのはよくない。かれはつくづくそう思った

やつら(魚)は、やつらを殺す俺たち人間ほど頭がよくないんだ。もっとも俺たちよりは、気高くて立派ではあるけどな

たぶん罪なんだろう、魚を殺すってことは。たとえ自分が食うためであり、多くの人に食わせるためにやったとしても、罪は罪なんだろうな

大きな海、そこには俺たちの友だちもいれば敵もいる

70代で海の上にいると、ここまで達観するんだと感心するほど、名言が散りばめられています。

人生で何度も何度も読み直したくなる名作です。

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