同士少女よ、敵を撃て

いやー久々に「一気見できて面白くて歴史も学べてロスる作品」を読んだなぁと、読了後感動した作品でした。
すごく読みやすいから、純文学とかにありがちな「読むのダルイ時間」が全くなくて、勢いで全部読めちゃいます。
初心者の方に聞かれたら、おすすめしやすい本なので、私は色んな方に勧めています。
2022年本屋大賞を受賞し、第166回直木賞受賞候補作品となった「同志少女よ、敵を撃て」という小説は、逢坂冬真さんの処女作です。

ロシアによるウクライナ侵攻と相まって発売されたため、爆発的人気を集めました。私も一気読みしました。日本のメディアではどうしてもウクライナ寄りの報道が多く、ロシアを悪くとらえがちですが、そのロシアを少し理解して近くに感じることのできる作品でした。

「なぜロシアは侵略するのか」

ウクライナ侵攻のすぐ後にユーチューブのテレ東Bizで、ロシアが「侵略され続けてきた国」であると聞いて驚きました。ロシアにしてみたら、昔自分の国だったところ(ウクライナ)が独立して、アメリカやEUがそこへ侵略して基地を作ろうとしているのは脅威なのかもしれませんね。日本が九州を占領されて、数年後に取り戻そうとするようなものなのかもしれません。
にしても、戦争をしかけることは行けないことだと思いますが…。

17歳の少女セラフィマが、村を焼いて母を殺された恨みを晴らすために、腕利きのスナイパーへと成長していく物語です。

美しい少女が一度はドイツ軍の捕虜となる…それだけで彼女の悲劇がわかりますよね。
女としての運命を背負って復讐のために歩き出すという、全体的に暗い話です。

主人公セラフィマの母を殺した仇のスナイパーは、敵国のドイツ人ではあったものの、人間味のあふれる人物でした。
そのことがより一層、セラフィマの復讐を苦しくすることとなるのです。

作者さんが丹念にロシアや近辺地域の歴史を調べたうえで書いてあるので、勉強になりながらも楽しめました。
オモシロポイントは次の4つ。

STEP
実在したロシアの女狙撃手が登場する

実際に第二次世界大戦で女狙撃手として多くの戦果を挙げたリュミドラ・パヴリチェンコという実在の人物が、物語の登場人物として出てきます。
「ロシアン・スナイパー」という映画は彼女を主人公とした作品です。

パヴリチェンコは負傷して前線からは退いたものの、
知名度は高いから外交的な役割でアメリカに行ったり、
兵士の前で講演会させたりと、終わらぬ兵役に疲弊しています。

抜け殻のような彼女は、セラフィマの未来の姿にも見えました。

STEP
ドイツとロシアの第二次世界大戦時の戦いを、臨場感をもって知ることができる

第二次世界大戦で、日本は兵士と民間人を合わせて300万人もの死者を出しました。
しかし、ロシアはなんと2700万人の死者を出しているのです。
行方不明者も加えると、国の損失は計り知れません。

ロシアの被害はどの国よりも大きく、
戦場となったベラルーシ、ウクライナでは、人の血を吸っていない大地などないと言われるほどでした。

1945年、ナチスドイツを破ったのはロシア軍。
2700万人もの屍の山の上で、やっと勝利したときの喚起は、今なお5月9日の戦勝記念日に受け継がれています。

第二次世界大戦時でのナチスドイツの進軍はすさまじく、ヨーロッパの大部分に侵略してロシアとも血みどろの戦いを繰り広げていたのです。

「同士少女よ、敵を撃て」のもっともシリアスなシーンは戦場であったスターリングラードでの戦い。
歴史に名高い戦地として死闘を繰り広げるシーンがリアルに書かれています。
バタバタと兵士が死んでいく横で、普通にスターリングラード在住の市民が暮らしていることもまた、リアル過ぎました。

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「女目線」での戦争を見れる

物語の中でセラフィマは「ある敵」に対して「同志少女よ、敵を撃て」と自分自身を鼓舞して、撃つシーンがあります。

セラフィマの本当の敵は、私たちが考える「敵」とは違い、ラストでハッとさせられます。

セラフィマの一撃は、戦いに身を投じる全ての人の心に巣くう「野獣」を撃ち抜き、それは本を読んでいるだけの現代を生きる我々の心をも貫く弾丸でした。

彼女はおそらく「戦争」そのものを打ち抜いたのです。

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「戦争は女の顔をしていない」と、絡めた内容になっている

第二次世界大戦で、ロシアには80~100万人の「女兵士」がいたとされています。

相次ぐ戦争による「男性兵士の不足」から、志願女性が多くいた、世界的にも珍しい国でした。

戦後ロシアで活躍した女性兵士は、生き場もなく肩身を狭くして生きていくこととなります。
物語のラストでそこにインタビューに来る女性記者はなんと「戦争は女の顔をしていない」の作者であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチでした。

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「戦争は女の顔をしていない」はロシアの元女性兵士にインタビューして回った女性記者の手記です。
500人ものインタビューをした結果、浮かんでくる戦争の悲劇は、男とは違う視点でとても興味深かったです。

好きな作品なのでついつい話過ぎましたが、ネタバレしすぎないように注意しました。

まだの方はぜひぜひ一気見してみてくださいね。

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