ノルウェイの森(村上春樹)感想・考察

村上春樹さんを村上春樹さんたらしめた名作。一気に読み切れる面白さなのに、要所要所で「??」と春樹ワールドの空気が読み込めずに置き去りになる部分もあり。そっか、この世界ではこれが普通なのか。異世界の(春樹ワールドの)住人はこんな思考なんだなと変に納得しながら、苦も無く読み進められる不思議な世界でした。

私は昭和生まれですが、生きてきた大半は平成でした。
令和になった今、春樹の小説を読むといつも、少しかびた狭い畳の部屋が思い浮かびます。
私はほとんど生きていなかったはずなのに。
私の知る時代では、床はほとんどフローリングで、部屋は小ぎれいに清潔だった。
でも、春樹の小説を読むと引き戻される「昭和の畳の世界」。
懐かしく、ノスタルジックな雰囲気に、冒頭からザブンともぐりこんで、息を止めながら中を泳ぐ感覚です。

ノルウェイの森には2人のヒロインが出てきますが、私は断然みどりちゃん派です。
ナオコは…20代の頃、初めて読んだ時には理解不能過ぎました。
今読み直すと「ああ、うつ病かなにかかな?」と予想はつくのですが、その理解不能の彼女に、なぜ構い続けるのかも疑問でした。
もちろん今では、ちょっと謎めいた女性の方がモテる、みたいなのもわかるんですけどね。
わかりやすく正直で可愛いみどりちゃんのほうが断然いいのに、男性って謎めいた迷宮に入るの大好きですよね。

ノルウェイの森という本自体が、ナオコそのものと言ってもいいくらい、深く暗く、どこまでも続く鬱蒼とした茂みの中というイメージです。

結局主人公は、キズキのことも、ナオコのことも理解できず、ノルウェイの暗い森を飛行機から見下ろして、2人のことを…理解できなかった自分のことを、何度でも思い出すのでしょう。

生きようとする人間にとって、「死に向かう人間」は理解不能です。
かまって寄り添ってはいけない。
引きずり込まれてしまうから。
主人公がナオコに近づくほどに、そんな不安が胸をよぎりました。
そっちに行かないで。
戻ってきて。
と。

だからみどりが主人公を気にかけるのが、救いに思えました。
当然今後も生きていき、生きるからには幸せを模索する。
みどりがそんな普通の(普通ではなかったけどw)女の子でホッとしました。
主人公にとっては、緑がたった一人のクモの糸だったのかもしれません。

私はノルウェイの森をはじめ、村上春樹さんの作品は大好きでほとんど読んでいます。

ただ、このノルウェイの森が一番何度も繰り返し読んだかもしれない。

ノルウェイの森を読むたびに、そして理解できないナオコの心情に触れるたびに
「私はまだ、大事な人をなくすという経験をしていないんだな。だから理解できないんだ。」と思います。
この本は、生と死のはざまを描いている作品だと思うので、理解できないことは幸せなことなのかもしれません。

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