号泣する準備はできていた(江國香織)感想・考察・ネタバレあり

私は実は、江國香織さんがあまり好きではなかったんです。「ザ・モテて来た女」って感じがして、自分がそうではないから引け目もあり…「はいはい、非モテの私には知らない世界ですよ」って感じで遠ざけていました。
今回も、江國香織らしい、強くて旅好きで自由気ままに恋愛を楽しむ女性が主人公で、
「ちぇ。またモテモテ女がフワフワしたことを垂れ流す系か…」
と思って読んだけど、
なんか今回のモテ女は共感できる部分もあって…好きでした。
好きというか、
「モテて口数少なく、何考えてるかわからない女が、ちょっと本音を暴露すると、なんだ。自分と同じ人間じゃん。非モテと大して変わらんじゃないか(笑)」
と思えたというか。
読んだ後に、全てをひっくるめた敗北感に襲われました。
モテてる女はどうせ楽して生きてるんでしょ?
と思ってたのに、モテてる女、こんなにわびしいんか。
モテない私まで、主人公に共感して一緒にじんわりと心臓から血がにじみ出るような切なさを味わってしまったじゃないかww
さすが江國香織さん…
心がオッサン化している私でさえ、こんな短編の短いストーリーだけで、あっという間に「女」にしてしまうなんて…。
2003年下半期の第130回直木賞を受賞した名作です。
この話を読んで、私は私が心底女性であることを思い出しました。
浮気されたのが悔しいとか、
それに対してみじめに泣いてすがれなかったこととか、
タイミングを逃したけど、今からでも号泣してみようかな?とか、
7歳の姪っ子の未来を思い描くことで、自分自身は子どもを産むつもりはないこととか、
なんかもう、「女の切なさ」が凝縮されて、読んだ私も意味不明に号泣しそうです。
この本を読んで号泣したくなった女性は、きっと、過去のどこかで「強がっちゃったがために、号泣するタイミングを逃しちゃった経験」があると思います。
あるにちがいない。
私にもあった。
この本を読んでその記憶を思い出した今、元彼に電話して、あの時の「号泣」を取り戻したくなる。
あの頃の自分も確かに、
号泣する準備はできていたはずなのに、
強がって涙をこらえてしまった。
感情を爆発させるのを、こらえてしまった。
こんな気持ちは、墓まで引きずるに違いないから、若い女性に「泣きたいときは泣きわめけ!」とアドバイスしたくなります。
くっそ、余計なことを思い出させてくれる名作じゃないか。
…10ページくらいしかない短編なのに!
私は本当に「モテる女ってこうよ?」という感じの江國香織さんの小説、嫌いだったんですよ。
「冷静と情熱のあいだ」とか、他にも数冊読んだけど、気ままに生きて男と流れるようにセックスして、「でも付き合ったりはしない」的なよくわかんないその場だけの関係の多い、恋多き女性が鼻につくから。
モテモテ女たちの男遍歴を延々と聞かされてる感が上から目線に見えて嫌いだったのに。
(流れるように読ませてくれるので、読んではいるのですが)
たまたま本屋の直木賞受賞作品コーナーで見つけてしまって、「直木賞なら読んでみるか」なんて軽い気持ちで買っちゃった。
そしてやられてしまいました。
江國香織さんは女の気持ちをお見通しです。
私たち、号泣するタイミングを逃してしまった強がり女たちが、
本当は弱虫で根に持つうじうじだということを、
見事に見抜かれています。
今まで嫌っててすみませんでした。
大好きになりました。
完敗です。
感想・レビュー