百年法(山田宗樹)感想・考察

若く美しいまま、老いずに年齢を重ねたい。
そんな夢のような世界感なのに、登場人物たいてい不幸そうなディストピアワールドの物語。
2013年に第66回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。
そして2013年の第10回本屋大賞では第9位にランクインしています。
100年生きるって大抵の人間が望んでいることなんでしょうね。
若い姿のまま生きるのも、多くの人が望んでいるのだと思います。
私がちょっと変わっていて、しっかりと老いて、70年くらいで人生を終えたいと願う変人なので、「この設定は別に幸せじゃないでしょ」と思って手に取ったところ…
やっぱり不幸まみれの内容でした。
結局人類が増えすぎると食糧問題にぶち当たって、長く生きた人から退場を迫られることになるんですよね。
しかもそれが法案となり、若くぴちぴちの外見で、でも100年以上生きた人は死へ向かうことを義務付けられる。
人間の人間による完全管理で、かえって窮屈な世界になっちゃってます。
こんなにしてまでも、若くきれいで居続けたい気が知れません。
私だってアンチエイジングのためにヨガやったりジム行ったりします。
けど年々老いていきます。
だからもっと頑張る。
でも年を重ねるごとに、できることが少なくなっていく。疲れやすくなっていく。
でも・・・子どもたちが育っている。次世代の若い子たちが育っている。
できないことが増えていく大人から、できることが増えていく子どもたちへと引き継がれていく世界こそ、正しくて美しいのだと思います。
物語の世界感は面白いし、文体も読みやすかった。読み進められやすかったです。
登場人物のそれぞれのポジショントークも、どの立場でも理解できたし共感も出来た。
政治家が美談を語るところは興ざめしたけど、かえってリアルの政治家っぽかったです。
最後に政治家がもっともらしく国民愛を語るのは、本当にやめてって思うくらい白々しかった。
「インフラの整備を最優先に」
このセリフに「け」と思ってしまいました。
大統領は確かにそう思っていたのだろうと思うけど、国をここまで衰退させた政治家が、最後だけ良い恰好しないでよと。
色んな立場の視点から語られるので、主人公が誰かわかりにくいのだけど、作中のほとんどみんなが若返り施術を単純に受けているのに、一人だけ普通に年を重ねる人物がいて、ほっとしました。
「そうそう、年を重ねるって素敵でしょ!」と、みんな見習ってほしい気持ちでした。

感想・レビュー