グレートギャツビー(フィッツジェラルド)感想・考察

「英語で書かれた20世紀最高の小説」第2位のグレートギャツビー。
フィッツジェラルドが大好きになる作品です。
映画では色々受賞しているのに、意外にも本は何も受賞していませんでした…。

グレートギャツビーは第一次世界大戦後の時代ですので、アプレゲール的な意味をたくさん含んでいます。
だから現代を生きる我々にはわかりにくい部分も多いんです。

つまりグレートギャツビーは…三島由紀夫の「金閣寺」みたいに、戦争を経験した人たちが、戦後経験する漠然とした時代心理を、ぐうの音もでないくらいに綿密に描いた作品ということです。
その時代の多くの人は、同じ思いを抱えて共感であふれる作品だったということです。
だから高く評価されてるんだと思います。

「グレートギャツビー」は全体を通してニックの「ロマンチストな語り」というフィルターがかかった物語だなと思います。

「確かに起きたこと」ではなく、「ニックのロマンチックな創造」を起きた出来事のように語るから、実際どうだったのかよくわからない部分が多いんです。
ギャツビーの心情かと思いきや、よくよく読むと、ニックが「ギャツビーになりきって想像した心のうち」だったりするんですよ。
主人公のニックがとにかくギャツビー推しすぎます。

語り手のニックは物語後半では、アメリカンドリームを叶えたギャツビーに心酔しており、ギャツビーをロマンチックな「グレート」な存在に押し上げています。

第一次世界大戦後に、多分戦争で心が傷ついたニックゆえの、ロマンチックで希望に満ち溢れたギャツビー像が、本人の意思を無視して暴走している感じです。
私は本当のギャツビーは、もっと素朴で小さな幸せを願う普通の青年に見えるんですけどね。

グレートギャツビーの見どころを簡単にまとめてみました。

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ニックはPTSDだった

ニックは第一次世界大戦に出て、心に傷を負って故郷を出てきた29歳の若者です。
いつまでもフラフラちゃらちゃらしてるから、親戚にも家族にも心配されまくり。
戦争で負った傷が大きかったので、周囲もはれものに触るような様子…。
戦争を経験してない我々世代には想像つかないけど、精神がかなり危うかったんだろうなと思いました。

「グレートギャツビー」という本全体を通して、ふわふわとしたニックのロマンチストな幻想の中にいるような印象を受けるのは、深刻な心の傷を負ったニックが、文字通りロマンチストな世界を作り上げて、そこに逃げ込んでいるからかもしれません。

けど、物語のラストのニックは、ふわふわしたロマンチストから、少し抜け出せたような印象を受けます。

深刻なPTSDから人を立ち直させる…ギャツビーはやっぱりグレートです!

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ギャツビーはギャング?

ギャツビーは犯罪的行為で巨万の富を得たとあるけど、何をしてるのかはっきりかかれません。
ただ、ギャツビーの共同経営者的なウルフシェイムは、「ギャングじゃんw」と丸わかり。
つまりギャツビーもギャングでアウトローな人物だとわかります。

無一文から32歳で40エーカーの土地に豪邸を立てられるほどの大富豪になるには、やっぱり危険な橋を渡ったのでしょうね。

40エーカーとは、大体だけど、東京ドーム3.6個分くらいの広さ。
32歳で頑張りましたが、ギャツビーがGreatなのは、お金持ちだからではありません。

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女性蔑視がすごい

グレートギャツビーは面白いのだけど、女性描写がひどすぎますw
物語としていい位置におさまっているからいいものの…。

デイジーにしろジョーダンにしろ、金持ちの豪邸でけだるそうにダラダラして過ごし、花瓶の花のようなどうでもいい印象を受けます。
見た目さえ美しければ及第点。みたいな。

デイジーに至っては頭空っぽにさえ見える描写が多すぎて、「いくら何でも女性を馬鹿にしすぎてないか?」とかばいたくなります。
でも上流階級の女性ってこんなんなのかな。
最初から最後まで頭空っぽのバカ女のように描かれていて、ちょっとかわいそうです。

デイジーの特徴として書かれていることと言えば「見た目が美しい」ことだけ。

状況を鑑みれば、もうちょっと情熱やデイジーの意志があると思うんだけどな。

ギャツビーと夫の間で揺れているような描写はちょっとだけ出ますが、誠実さは感じられず…好きになれないタイプの女性でもあります。
ギャツビーの方が真摯な気持ちの素敵な青年だけに、デイジーに対して「なんでこんな女をw」と思ってしまうんですよね。
ニックがデイジーを見下してるから、その気持ちが読んでるこっちにも伝染してくる感じがしました。

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ギャツビー推しのニック

ニックは「自分は大学を出てる」とか「いい家系だ」とか、「自分は倫理的だ」みたいな事ばっかり言ってて、ちょっと鼻につく感じなんですが、ギャツビーに対してはどんどん傾倒していって、最後には「好きすぎない?」と引くほどです。

現代ほど差別意識に対する意識が低かったので、グレートギャツビーの中には人種差別的発言はたくさん出てきます。

ニックは「俺はこの世の差別の中でいえば、上層部に位置する人物だよ」と事あるごとにアピールしてくるんですよ
ギャツビーのことも最初は見下してるような感じなのに、途中から急に推し推しになるから読んでる方もびっくりします。

アメリカンドリームを叶えたギャツビーが好きだったんでしょうね。

憧れのギャツビーの心のすき間にはいろうと頑張るニックが可愛いです。

「彼のすごさを理解できるのは自分だけだ」的にますます燃え上がり、ギャツビーの偉大さをこうして小説に残すんです。

30歳の可愛い少年です。

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ギャツビーは実は現実主義の人

グレートギャツビーは、ニックのロマンチックな幻想というフィルターがかかった小説です。
よくよく読むと、「ギャツビーは別にこんなこと言ってないのに」みたいな個所がたくさんあるんです。

ニックの妄想が加速して、勝手に「ギャツビーが多分こう考えている」って、本人の気持ちを代弁してる個所がたくさんあるんですよ。

そういう「ニックのロマンチックなフィルター」をはずしてギャツビーを見ると、結構普通の人。
ビジネスライクの現実主義的な人です。
そして意外と地味です。

ニックが言うほどロマンチストな人間ではありません。

でも戦争で心に傷を負ったニックにとっては、ギャツビーは「グレート」であり続ける必要があったんでしょうね。

ニックの妄想フィルターを取り払ってギャツビーを眺めると、お金持ちの孤独な仕事人間という人物像が浮き彫りになります。
じゃあギャツビーの、一体何がグレートだったのか。

それは、誰もがお金稼ぎや好景気に沸いていた、資本主義のはしりであるこの時代に、お金よりも小さな恋心をずっとずっと大事にしてきた点だと思います。ギャツビーの価値観が、美しく尊かったんです。
金銭至上主義は汚く見えますもんね。

そしてもう一つ。
ニックはギャツビーのその素朴で美しい心に触れることによって、戦争による心の傷から回復して、人生を取り戻したことです。

ニックという一人の人間の心を救ったという点で、ギャツビーはやはり、偉大な人間です。

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