沈黙(遠藤周作)感想・考察

宗教的な、特にキリスト教を深ぼりした作品の多い遠藤周作さんの代表作です。
面白かった。
こむずかしいないようなのに、時代描写が忠実で興味深く、するすると読めます。遠藤作品全部、するっと読める。読むのが難しい感じがなく、読み終わったら「難しい本を読み終えたぞ!」という自尊心も育ちます(笑)

遠藤周作さんってこんな人
  • 1923年…東京で誕生
  • 幼少期…北満州国で過ごし、神戸に帰国
  • 1934年…カトリックの洗礼を受ける
  • 1955年…「白い人」で芥川賞を受賞
  • 1995年…文化勲章受章
  • 1996年…病没

遠藤周作さんは、20世紀日本を代表する歴史小説家です。
宗教(キリスト教)をテーマとする作品が多い一方で、ユーモアにあふれた多彩な作品も多い作家さん。
昭和にはめずらしい「スラスラ読みやすい小説家」という特徴で、21世紀現代でも一気読みできる魅力ある作品ばかりです。

「沈黙」とは、1644年、日本でキリスト教弾圧の「踏み絵」儀式が横行していた時代のストーリー。

踏み絵とかさせられていたあの時代に、海外から来た神父さんが主人公…何が起きるか、わかりますよね?
悲惨も悲惨、ぎりぎりのところで生かされている拷問はすさまじい描写でした。

キリストを100%信じているからこそ、「キリストだったら、拷問を受けて苦しんでいる人のために、神を捨てるかも?」と考えるのは、無宗教の私からすると「それでええやん」と思うのですが、本人からすると苦しいのでしょうね。
私の母は熱心なクリスチャンで、子ども時代えらい迷惑をこうむったので、「宗教二世」として私は宗教そのものが大嫌いです。
人から「正しい事は何か?」の判断を奪って、「これが正しい!あっちが悪い!」と押し付けてくる感じの宗教が嫌いなので、信じている人をどうこうは思いません。

この本のタイトルの「沈黙」は神の沈黙のこと。
信じてない私からすると、作中の人物が繰り返し「神よ、なぜ沈黙するのですか?なぜ答えてくれないのか?」との問いに、「答えるわけないじゃん、いないんだし」としか思いません。

この本を読んだ大学生の時、私は母を宗教ごと捨てて、心軽く自分の人生を歩み始めたころで、宗教嫌いがMaxでした。
今は母とも和解して、「私の母は、あの時代【神推し】だっただけなんだな。子育て大変すぎて狂ってた時期だったんだな」とわかります。
けど、沈黙を読んだころ、本当に神もキリストも大嫌いだった。

「答えるわけないじゃん、神なんているわけないんだから」

この世の誰よりも、キリストも神も存在を否定したかった時期の私ですら、物語の最後に「神がいる」ことを読み取ってしまった。
ずっとずっといた。
くっそう、神なんていないと割り切ったのに、子どもの頃から染みついた神への想いがうわーーーーっと出てきて、泣けてしまったじゃないか。
そこにいたのね。
「神はいない、宗教は生きてる限りやりたくない」
と思ってる私のそばにも、いるのかしら。
わたしすらもしかすると、まだ大きな手のひらの中にいるのかもしれない。
暖かく大きな手のひらの上で、私の苦しみも人生もすべて、支えてもらっているのかもしれない。

少なくとも「あんなの信じるの馬鹿だ」なんて言えるような存在ではない。
自分一人だけひっそりと信じなければいい。
誰かの心の中で大切にしているものを、私は否定することはできないな。
なんて思いながら読みました。

「主よ、なぜ答えてくださらないのですか?」
「私は沈黙してはいない。あなたとともに、苦しみ続けていたのだ」

  • フェレイラ…「キリストだったら同じように転ぶ(キリスト教を捨てる)はずだ」
  • ロドリゴ…「キリストも常に側にいて、一緒に苦しみ続けていたのだ」

2人の神父の対比に、考えさせられました。

そして、キリストを売ったユダについての解釈も、ものすごく感じ入りました。

2016年に日米合同で「沈黙―サイレンスー」という映画が公開されました。
アカデミー賞受賞作品として日本でも注目を集めましたね。
沈黙 -サイレンス-(Amazonプライムビデオ)で見ることができます!

うちは両親ともにクリスチャンだったけど、成人して宗教の自由を得た今、私はクリスチャンではありません。
幼少期や思春期の「日本におけるクリスチャン」は少数派で希少で恥ずかしい記憶が連なっていることも一因ですが…

大学で歴史学に傾倒した時に、宗教とはその風土とともに伝統されるのが一番自然な形ではないか?
と思い、自信の子どもたちは日本の「常識」とされることをまず伝えてから、成人して自由に宗教を選んでいけばいいと考えたからです。

だから何ってわけじゃありませんが、大学時代、自分の生まれ育った環境で身近だったキリスト教について勉強しまくった時期があり、その時に一気に読んだ遠藤周作さんの作品は、難しい歴史書・宗教書の中の「楽しみ」「娯楽」の一つでした。

遠藤さんの作品は、本当によみやすい。

そして史実に基づいて書かれているため、歴史書としても大いにイメージを助けてくれます。

今の日本におけるキリスト教は少数派ではあっても弾圧などされず、国民は宗教の自由を与えられています。
が、死が身近だった時代こそ余計に、すがらずにはいられなかった「神」。
苦しみの中で語り掛け続ける信者やロドリゴの祈りに「沈黙」を続ける神というのは、容易に想像できますよね。

天から声が降ってきて話しかけてくることはなくても、命を懸けて信じているものに対して何らかの啓示が欲しいと願い続けるものです。

命がけの祈りに対する「沈黙」。

うすいのに、ふかい。
最高の作品でした。

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