心淋し川(西條奈加)感想・考察

第164回(2020年下半期)直木三十五賞受賞作です。
なんとなく、江戸の下町の汚い川のほとりに生きる、どちらかというと「人生に失敗した人たち」の悲惨な人生を思い出す話しかな?と思って読んだら、その通りでしたwww
江戸の町の情緒あふれる描写の中で、今も昔も人生が上手くいかずに流れ着いた人々。
短編が集まった感じで一つの川のほとりの同じ舞台で書かれているので、章ごとに話が飛び過ぎずに地に足を付けて読み進めることが出来ました。
さすが直木賞と言わんばかりの深い話の連続で、下町を流れる汚いどぶ川の臭いがしそうなくらい、人間描写が丁寧で、暗い。
今の東京の千駄木界隈のかつての姿がありありと浮かぶような描写がされているので、今の地形や街並みを思い浮かべながら、「江戸時代はあの辺が長屋とかだったのかなぁ?」と想像しやすかったです。千駄木は今でも60歳代の原宿と言われるほど愛されている土地。「心寂し川」を読んでちょっと歩いてみたくなりました。
女性作家だけあって、女性の描き方が丁寧でしたが、案の定、と言わんばかりの悲惨な女性の集まりで、そういう物語を読みたい人にはぴったりだなと思いました。
要するに…岡場所で体を売ってた女性の流れ着く先…みたいな感じの登場人物ばかり…。
直木賞作品だけあって、物語全体像をつかみやすく、文体も読みやすくスラスラすすめられた。
文学ってたまに「読んでいてしんどい」時がありますよね。
固い文学ならなおの事。
かといって、ライトノベルさながらの軽々の本を読んでも満足感が得られません。
「心寂し川」は導入部分から途中経過、終盤まで一気に読めてしまう読みやすさがありながら、読み終わった後に「この本を読んだぜ!」と勲章で掲げたくなる「重さ」もしっかりと感じることができました。
読むのにしんどい文学を読んだ後に感じる重厚感も感じられたんです。
江戸時代の庶民の暮らしがイキイキと書かれていたので、歴史書としても興味を惹かれるものがあったからでしょうか。
「固い文学苦手」って方にもおすすめです。
針仕事の需要や賃金、大店と呼ばれる店の内情や家族の役割り、1回の食事にかかる費用など、庶民の生活に根付いた江戸時代の暮らしが知れて面白かったです。
江戸城大奥とかの話しはよくあるけど、庶民の話ってあまり見たことがなかったので新鮮でした。
岡場所と吉原の遊郭の違いとかも「へ~?」って感じでした。
四文銭での一食がどのくらの安さなのか、とか、そのための食材調達法なども読んでいて面白かったです。
なんか、水戸黄門を見てるみたいな?
短編集なので、リセットしながら読むめんどくささがあるかな~?と思ったら、一応一貫して繋がっている人物像があるので、同じ空気で読むことが出来ました。
けどなんか、想像通り、重い。胃をぎゅっとつかまれるような、「やっぱりこういう生き方になってしまうのか」という、希望や救いがもっと欲しいなとも思える内容でした。
感想・レビュー